lost a way
[ 道に迷った(霜花落処) ]「ねぇ、阿部」
「あ?」
「俺が誰かのお婿さんになるより先に、俺を阿部のお嫁さんにしてね」
まるで幼稚園児の願い事。
言ってみただけ。
叶うかどうかなんて、二の次の。
それでも、その声の影に潜む悲痛な願いに気づかないふりをするには。
きゅっと握られた手は、あまりにも心許なくて。
だから。
「…あぁ」
静かに頷く。
夜の静けさと同じくらい、厳かに。
正しい道なんか知らない。
きっと俺達が選んだのは間違った道なのだろう。
そうと分かっていて、進むよ。
(だってもう、二人が一緒にいない
20130308
〈そこはきっと棘道。〉