It's a good day, Do you know it?
[ 今日はいい日だ。なぜだかわかる?(霜花落処) ]お前さ、あれやめろよ。
阿部が眉間に皺を寄せて言う。
あれって何?
言葉もなくただ首を傾げれば。
この前お前、拗ねただろ、あん時の顔。
と言う。はてさて、その時自分はどんな顔をしてただろう。
残念ながら自分では自分を見れないもんで。
言えば、減らねぇ口と返される。何を言うの。何が言いたいの。
分かんなくて更に首を傾けると、阿部は一つ大きな溜息。いい加減呆れられただろうか。鬱陶しいと思われただろうか。ごめん、と言うのもおかしくて口を噤んで表情を作る。
それ。
阿部が直様指摘した。
その顔。
え?
…だから、拗ねたり哀しい時に、笑うのやめろ。
……嫌?
恐る恐る聞けば、唇をへの字にして。
ずりぃじゃん。
と、確かにそう言った。ズルい、の意図が分からなくて戸惑う俺に、阿部は目線を逸らして。
お前は、いっぱい表情あんのに、コロコロ変わんのに、俺あんま変わらねーし、その上で笑顔チョイスされっと、なんか、…なんか、つれぇ。
言い切って、また溜息。でも、そうは言うけどね、阿部。哀しい時に笑顔浮かべるのも、多分、凄く辛いんだよ…。それはもう殆ど条件反射のようなもので、感情をコントロールした上での表情ではないのだけど、それでもあべこべな心と顔の差に軋む何かはあるわけで。
それを口にしたわけじゃないけど、阿部は心を読んだように、分かってるよ、と言い置いて。
だから、哀しい時には泣きゃいいじゃん。笑わなくていいじゃん。それで俺は多分困るけど、それは俺が慰め方分かんなかったりで焦るだけで、お前の落ち度じゃねぇだろ? つーかそんなこと思わねぇよ。お前が泣くのは百パー俺が悪いんだ。俺の口が悪かったり、配慮が足りなかったりする所為だろ、きっと。
阿部は更にこうも言った。
お前の中で何が地雷かなんか、言ってもらわなきゃ分かんねぇ。だから教えろ。笑うな。笑って、なかったことにすんじゃねぇ。お前の中に溜め込むな。その時その時で解決して行こう。
そして一度大きく深呼吸したかと思うと。
お前とはずっとずっと、心から笑っていきたいんだ。
そう、言った。
(……神様、かみさま、ねぇ、聞いた?)
涙がポロリと溢れ出て。
な、んだよ…今の、そんな哀しかったか?
と慌てふためく阿部に首をぶんぶん横に振って。
ちが、ばか、嬉しい、の!
と言って泣いた。阿部は数瞬呆然としたかと思うと。
…お前、哀しかったら笑うし、嬉しかったら泣くのかよ。
と、呆れた声で言う。仕方ないでしょ。なんでなんで分かんないの。嬉し泣きってジャンルが、あるでしょーが!
(だからだから、安心して。これからは今みたいにちゃんと伝えるから。哀しかったら哀しいって泣いてやるから。だから、ね)
あべ。
あ?
ずっと、いっしょ、ね?
(返事は、最高に不敵なスマイルで)
20121229
〈ずっとって一生。一生、一緒。だから、一生、しあわせ!〉