空
地平線を見る。
遠く遠く、夜の淵に佇む空を。
…忘れていた、訳じゃない。
だが終わったことだと思っていた。
全てが海へ、原始へと還ったのだと。
だから新たな望みを抱いた。
だから別のことを願ったのだ。
(新たな主の下で、悲願の達成を)
嘗て諦めた未来。
その未来を、辿ってみたかった。
(グラーニアとのこと、後悔などしていない。あの結末に、不満はない)
そう思っていた。
思って、いたのに。
(…何処かで知っていた。目を背けているだけだと)
あぁ本当は、本当は。
(だが最早、目を背けることはできぬ…)
本当に、願ったのは。
(――― )
(――― )
(――…フィン)
…あぁ、そうだな。
私が此処にいる理由。
聖杯に願うほど、思うのは。
「私は、貴方の騎士でいたかった」
呟きの後、地平線が輝く。
地上に訪れた夜明けは、けれど吹きさらしの心には届かない。