神の御前に引き摺り出せ




『素敵ね』

 そう言った彼女は、とてもとても小さくて。
 世界の中心にいるのに、世界を知らない。
 無邪気で、無力で、でもだから、愛おしくて。

 守りたかった。
 あぁそうだ。
 真実、私はただ彼女の傍に居て、いや、居なくても。
 守りたかった。
 ただそれだけだったのだ。
 ただそれだけの事。
 ただ、それだけの。

 それだけなのに、どうして。



 私には、時間がないのだろう。





『素敵ね』

 世界の中心、私の主。

『本当に本当に、そうなったのなら』

 ただ独りだけと仰ぎ、独りになろうとも守ると誓った人。

『…ねぇ、  』

 両手に剣を。

『本当に、そうなったら、良いのに』

 そして望むものは、ただ、





 さぁ剣を。
 断罪してやろう叛逆者共。
 誰が許し誰が拒もうとも。
 私が貴様等を殺してやる。

 さぁ剣を。





 叛逆者を、神の御前に引き摺り出せ。





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 20100523
〈星が牙を剥く時。気を付けられよ。背後でなく前を。眼前でなく心を。知略は比肩を許さず。武勇は無双を豪語す。我は民の名の下に時を進める者。気を付けられよ。―――貴公の首は、何処に在りや。〉





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