馬鹿な子ほど可愛い
[ 暴言 ]目つきが悪い。
自分も若干それに当て嵌まるが、多分こいつほどじゃない。
顔は綺麗だが無愛想。
あぁ、長い漆黒の髪は気に入ってる。
頓着していないようだが、意外に質が良いのだ。
性格は…過激。
冷静のようでいて短気。
口も悪いな。
そして。
年下の男。
(そんな奴を、どうして好きになったんだか)
そう何度思ったかは知れない。
それでもその感情は嘘じゃない。
一時の気の迷いでも、ない。
例えこちらがそうであっても、相手がそうはいかない。
気が迷う事も狂う事も、こいつには多分無関係だ。
だからこの関係は、純粋な好意によって成り立つものだと思うのだが。
(…好意、ねぇ)
それもまた、こいつとは酷く無縁な言葉のようで、ちろりと笑う。
それを見咎めたそいつは、眉間に皺を寄せて言う。
「……真っ最中に、余裕だな」
「いッ…!」
ちり、と鋭い痛みが耳に程近い首筋に生まれる。
あぁこれは痕になるな……っておい!!
「そこはギリギリだろうッ!?」
僕の服がタートルネックだと言ったって首全部が隠れる訳じゃないし髪だって短いんだからな!、と怒ったって、フン、とそいつは鼻で笑っただけ。
「いっそ見せ付けてやれ」
「いやいやいや!!」
何を言ってるんだ。
リナリーさんに見られでもしたら!
喚く僕に、そいつは酷く冷静な目をして、良いのか?、と言った。
「え…」
「リナリーにだけ、バレなきゃ良いのか?」
「え、っと…?」
「………分かってねぇのな」
何がだ!?
こいつの言う事が分からなくてぎゃいぎゃいと騒げば。
「―――黙ってろ」
口を、塞がれた。
冷たい、唇で。
僕の唇を。
「ん――…」
キスは、嫌いじゃない。
体温の低い手で触られるのも嫌いじゃない。
抱かれるのも多分、こいつだから、嫌いじゃ、ない。
け、ど。
「、は…っ」
長い長い口付けの後、滲んだ視界と飽和した思考、ざわめく体が心許なくて、離れたそいつに手を伸ばせば。
小さく笑った気配。
そして絡められた指。
それから。
「あんた、可愛すぎんだよ」
余計な、一言。
20091218
〈好きだから、可愛い。 〉