candy

[ 望 ]



 カラン、と色取り取りの飴が私の両の手から離れては堕ちていく。
 地面と口付けを交わし、あぁ、何を想うの?
 望んだのは、甘い甘い夢の逆。
 身を蝕むような、そんな悪夢が欲しかったのに。

「…誰が」

 渡されたのは、甘い甘い、甘い、

「誰が、こんなの…!」

 恋。

「―――誰も欲しいなんて言ってない…ッ!!」

 滲む視界。
 その中に見えた、貴方の服の色。
 近づいてくる。
 後ろは壁。
 逃げられない。

「…それでも」

 でも、ほんとは。

「そんな事言っても」

 知って、る。

「君は、逃げないんでしょう?」

 自分の、本当の、望み。

「君の望みを、叶えてあげる」

 近づく貴方。
 逃げない私。
 そして。



 かかる吐息は、私が、奪う。





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 20090603
〈全て全て、全て。〉





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