相容れぬ者

[ 寂しき境界線 ]



 さぁ。

 と、その男は彼を見遣る事もなく呟いた。

 同じであって、我等は異なる存在。
 何故あいつがお前を拒むかなど、知れた事ではない。

 静かで、静か。

(けれどそれは決して、)

 知れた事ではないが―――分からぬでも、ないからな。

(許しでは、ない。)

 すらり、と剣が煌めいた。
 それは真っ直ぐに、彼の喉元へ向く。

 近付く事を許さぬ。
 触れる事を許さぬ。
 口開く事を許さぬ。
 貴様の存在、それすら罪悪に等しいと知れ。

 冷たくて、冷たい。

(声も言葉もその瞳も、)

 氷のようにではなく、それはただ、(きっさき)の鋭さに似て。

(あぁ全く同じであるというのに。)

 彼は溜息を零す。
 その男は瞬きをした。

 相容れる事は、ない。





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 20100423
〈海と空を頒つ、地平線のように。〉





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