死神の掌の中
[ 闇の棺は閉ざされた ]会いたいとは思わなかった。
また会えるかも知れないと知って、その方法が目の前にある事を知って。
けれどどうしても、あいつとの再会の場面を想像する事は出来なかった。
あぁもう会うべきではないのだと思った。
一度道を断たれた者。
道を別つ俺達は、だからきっと、二度と会うべきでないのだろうと。
会いたいとは思わなかった。
また会ったその時を想像する事は出来なかった。
だから拒んだ。
けれど恐らく、そんな理由ではなかったのだろう。
喪う事に慣れすぎていた。
喪う事を知りすぎていた。
喪う事が日常に成り下がって。
何度目かの棺の閉まる音を聞いた。
闇が舞い降りる音を聞いた。
俺はその中で佇んで。
想像した。
もしまた出会えたなら。
自分は一体どんな反応をし、あいつはどんな反応をするだろうと。
想像した。
出来なかった。
20100428
〈そしてまた、俺は繰り返すだけ。〉