昨日、君の夢を見た
[ Good night. ]学校の裏。
誰も来ない其処は、恐らく俺とあいつだけの秘密基地。
丁度いい長さに育った雑草を掻き分けて、俺はある一点を目指した。
(あ。)
カサリ。と乾いた感触が、俺の手に当たって、それを引き抜けば、それは手のひらサイズに折り畳まれた手紙だった。
(これか…?)
ぱらりと開く。
それは結構前に書かれたものらしく、土に汚れ雨で湿っていた。
それでも読める程度には、綺麗で。
「…ははっ」
漏れたのは、笑い声。
「はははは…!」
可笑しい可笑しい。
馬鹿だろう。
「そー言うことは、もっと早く言え…ッ」
可笑しすぎて。
「―――シンジッ…」
涙が止まらないだろうが。
『秘密基地、行ってみろよ。んで、更に奥に行けばいい。…多分まだ置いてるからよ』
昨日見た夢の残骸。
覚えてる箇所は、その言葉だけ。
顔なんか、ぼんやりとも覚えていないのに。
「……バカシンジ」
俺はくしゃりとそれを丸めて空に投げた。
「その言葉、まんま返してやる」
B5サイズの手紙に、たった一行のその言葉。
返すよ、その言葉を。
お前に。
―――好きだ。
それは遅すぎた告白だけれど。
20090529
〈ルーズリーフに書かれた、たった一行のラブレター。〉