廃墟にて
[ 彼の為に、己の為に ]「アンタさぁ」
俺を背後から抱きしめていたバクラが唐突に声を出す。
「…何だ」
「国の為とか王の為とかでしか、神に祈るってしねぇだろ?」
急に何を言い出すのかと思えば…。
「だったら何だと言うんだ」
チラ、と俺の後ろにあるそいつの顔を見上げれば。
「アンタの為に、俺の為に、……祈ってくれよ」
至極真面目な顔で。
「…何を?」
そんな事を言うから。
「―――アンタと俺が、来世でも会えるようにってな」
いつものように軽く流す事が、できなかったんだ。
「また会いてぇよ。アンタとなら」
だから祈ってくれと、俺の肩に顔を埋めたバクラ。
その言葉を、馬鹿馬鹿しいとは思えなかった。
それほどこの男に溺れてるのかと、そんな自分に笑って。
「……貴様なら、退屈はしないだろうな」
トン、とバクラに凭もたれ掛かりそう言えば。
驚いたように息を呑み、けれど結局バクラは嬉しそうに笑った。
「アンタが祈るのなら、また会える」
そうであったら良いと。
俺らしくもなく、思った。
20070813
〈それで来世に生まれたとして同じ国でなかったら。聞けば捜すさとあっさり言われて面食らう。世界中探してもし既に誰かのモンだったら掻っ攫う。それだけだと。口元に浮かべられた人懐こい笑みがその内容に酷く不似合いで、あぁそれでもその時はよろしくと言ってしまう自分は、一体全体なんなのだろう。〉