嘘付きlover

[ アイシテルって俺の口から云わせてみな。 ]



 サヨナラと真顔で云われるくらいなら、キライとむくれた顔で言われた方がマシ。
 嘘だよと笑った顔で言われる方が良い。
 絶対的に、それは、どうしようも、なく。





  楽園への片道切符はもうこの手に





「―――嘘だよ」
「マジだろ?」
「馬鹿バクラ」
「はぁ?」
「嘘だって、言ってんの」

 その声のその顔のその笑みの、なんと優しい事だろう。
 最早始め見せた恥じらいは頬を少し色付かせるに留めて、しかしだからこそ、その様は美しい。

「…ヒャハハ」
「バクラ?」
「あー、なんつーか、よぉ」
「?」

 緩む頬をどうしてくれる。
 機嫌は鰻上り。
 馬鹿という言葉、今は甘んじて受け入れよう。

「なー龍児ぃー」
「な、なんだよ」
「愛してんぜ」
「………ばか」





 嘘だと言い訳しなきゃ本当の事を言えないのなら、いくらでも言うと良い。
 本当の事なんか要らないから、何度でも嘘を吐くと良い。
 そうして言われた『好きだよ』という言葉さえ俺が真実にしてやるよ。
 『愛している』と返すから。

 その赤い顔を俺に見せて。
 その紅い唇を俺に頂戴。
 朱い果実を食む覚悟は出来てるから。

 一人で落ちるんじゃない。
 二人一緒に堕ちるんだ。

(だからだからだから、さ)

「…バクラ」

 何度でも呼んで。

「好き、だよ」

 何度でも言って。

「……嘘、だけどね」

 何度でも。





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 20101201
〈二人で堕ちれば、地獄だって俺が天国にしてやるさ。〉





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