ある日の朝の学校風景
[ りっぷくりぃむ ]朝、鏡を見たらふとある事に気が付いた。
「げ……唇がさがさー…」
空気が乾燥している訳でもないのに。
舌でそっと舐めてピリッと感じた痛みに顔を顰めた。
「はよー…」
ガラッと教室のドアを開けて入った。
自分の机に鞄を置き、取り合えず座る。
でも。
「………ガサガサ」
唇が気になる。
舌で触ったり、指で触ったりを繰り返していると、頭上から声が聞こえた。
「そんなに唇を触んじゃねぇよ。荒れるぞ」
驚いて仰ぎ見ると、バクラだった。
学校で現れるのは珍しいな、と思いつつ答える。
「……荒れてるから触ってるんだよ」
そう言って指で唇を指し示す。
「おー、確かにな。でも触ったら余計荒れるぜ?」
「だって俺リップクリームなんて持ってないし……」
「…なら、」
近付いてきたバクラの顔。
俺の顎に添われた指。
そして。
「…な………っ!」
長い長いキス。
「これで荒れないんじゃねぇの?」
最後に付け足したように唇をぺロッと舐め上げて、バクラは愉快そうに笑いながら言い放った。
「お、お前な……っ!」
ガサガサの唇は、お陰でしっとりとはしたけれど。
なんて事してんだよ!?
クラスメイトが見てなかったからまだ良かったものの…!
心の中でそいつに罵声を浴びせ続ける。
でも、唇はしっとりと濡れていて。
それを考え、また上気する頬。
「リップクリームなんて俺がいればいらねぇんだよ」
なんて自信満々なオコトバ。
こんな恥ずかしい奴が恋人だと言う事に、軽く眩暈を覚えた。
20070816
〈(誰か気付いてるってあのバカップルに言ってやれ)(駄目だよ城之内くん、そんなの)(そーそ、知らぬが仏ってねー)〉