stand by me

[ love or life ]



『…すまない、明日は、会えない』

 そう言うオレを。

『……そっか。お仕事、だもんね』

 遊戯が咎めた事は、一度としてない。
 けれどその瞳は何時も悲しげに揺れていた。
 いくら笑顔で隠そうと。
 その大きな赤い瞳が、嘘を吐けるはずなんてないのに。

『大丈夫。ボク、邪魔しないから。海馬君に迷惑なんてかけないから』

 分かってるよ、と。
 遊戯は何時だって笑った。

(―――そんな言葉を言って欲しいなんて願ってはいないのに。)





 束縛するヤツは嫌いだ。
 そんなものはただの自己満足でしかない。
 けれど。
 貴様のそれは、ただの放置だ。
 気遣い、遠慮、想いがそこにはあるのだと貴様が幾ら言っても。
 そこにオレの願いが入っていないのなら。
 それはただの押し付けでしかない。

(嫌なら嫌って、言って欲しい)

 傍にいたいなら。
 一緒にいたいなら。
 一言でも良いから伝えて欲しい。
 不安になるんだ。
 何時か貴様の瞳から感情がなくなってしまうのが。
 何の感情もなく割り切られてしまうのが。
 会いたいとも思われず「しょうがない」の一言で、済ませられてしまうのが。





『…海馬君?』

 あぁ。

『どうしたの?』

 止められない。

『海馬君…?』

 止まら、ない。

『―――どうして、泣くの?』

 どうしてと問う貴様に。

(『オレの気持ちなんて気づいてないくせに、分かってるなんて言うな』)

 そう言えたら、いいのに。





 言いたい言葉の代わりに涙が溢れて。
 ずっと気づかれないでいる傷が、痛んだ。





戻る



 20090327
〈恋はワガママなくらいで丁度いい。〉





PAGE TOP

inserted by FC2 system