sleeping beauty
[ 更ける夜の中で二人 ]夜遅く海馬の部屋を訪ねると。
「…何だ、犬。食事でも漁りに来たのか? 生憎だがメイドは全員既に休んでいる。貴様の為に叩き起こすつもりもない。諦めるんだな」
「…いや、違ぇんだけど」
視線を俺に向けるでもなく書類に落としたままそう一息で言いきった海馬は、とてつもなく機嫌が悪かった。
聞いていた通りだと、海馬に気づかれないように溜息を吐く。
「では帰れ」
それ以上言う事はない、とばかりにまた仕事に専念しようとする海馬を無理矢理椅子から立ち上がらせて、近くのソファへと座らせる。
勿論海馬は暴れるものの、疲れている海馬の体力は俺には及ばない。
それでも精一杯の抵抗をし、その蒼の瞳に怒りの炎を映し出す。
「何をするっ、この凡骨めが!! まだ仕事が残ってるんだ! あの書類の束が見えんのか!?」
「あー、はいはい。ちゃぁんと見えてるぜ」
「ならっ…!」
「けどな、今のお前は俺から見ても疲れて苛立ってる。それは、俺が来たからってだけじゃねぇんだろ?」
「……」
図星なのだろう、こういう所は素直な海馬は凄く分かりやすい。
「だから、お前の犬であり凡骨であり恋人である俺からの忠告」
海馬の頭にそっと手を添えて、俺の肩へと乗せる。
「安心して寝ろよ、瀬人」
俺が、ついてるから。
「……貴様なぞ…」
不満げな海馬の唇に、キスを一つ落とせば。
「………」
僅かに頬を染めて俺の肩口へと顔を埋めた。
大丈夫。
俺がお前を守るから。
「…可愛い寝顔」
俺だけの、お姫サマ。
20070819
〈お前が夢に魘されるのなら、騎士の如くそれから守ろう。〉