mind
[ 介入拒否 ]以前モクバと携帯の番号を交換したのを思い出したのは、海馬が倒れたという連絡を受けた時だった。
どうしようと涙声で言うモクバに、直ぐ行くからと言って通話を切り遊戯達に事情を話せば、遊戯がどこか傷ついた表情で「だから言ったのに」と呟いた。
何の事か分からなかったが聞いている暇はなく、上手く先生に言っといてくれと頼んで学校を飛び出した。
走って数十分でようやく海馬の家に着いた俺を迎えた磯野にモクバの事を聞くと、モクバは一旦会社に戻り指示を飛ばしているらしかった。
そうか、と頷いて海馬の部屋に行く。
そっと入りベッドに横たわる海馬を見れば、思っていた以上に酷い有様だった。
寝ても食べてもいないのが、一目瞭然。
どうしてそうなるまで海馬は体を酷使していたのか。
―――俺は、知ってる。
「…なぁ、海馬」
アイツがいなくなっちまってからお前がボロボロなの、モクバから聞いてる。
モクバははっきりとはその理由に気付いていないけど。
アイツの事、まだ引きずってんの?
らしくねぇよ。
アイツを忘れるように仕事増やして、倒れちまうなんてよ。
なぁ、何で。
「何で、俺のもんになってくんねぇの」
アイツの代わりで良いからと、何度も言った。
お前の心の空白を埋める為だけの存在で良いからと。
けれど、海馬は決して首を縦に振ろうとはしなかった。
―――知っていた。
俺なんて海馬とアイツとの間に入る事も許されない存在だと。
それでも。
「お前が好きなんだよ…っ」
辛いと分かっているのに。
止められない想いがココにある。
直ぐそこにいるのに。
(ココロの距離は、どれほど遠いのだろう)
20070827
〈哀しくても歩け。嫌でも進め。此処に遺された俺達は、前に進むしかないじゃないか。〉