full moon
[ 夜の帳は何もかもを覆う ]何かに呼ばれたような気がして、ハッと眼を覚ました。
だが身を起こしても傍には誰もいなかった。
「……遊戯?」
隣に寝ていた筈の、遊戯も。
どこに行ったのかとベッドを抜け出せば、バルコニーにいるのが見えた。
「…遊戯、どうした」
「海馬」
俺に気付いた遊戯が振り返り、ほら、と視線を空に向ける。
先には、儚げに輝く、満月。
「綺麗だろ?」
お前みたいだ、と笑う遊戯に。
俺はそっと唇を合わせた。
「…どうしたんだ?」
滅多にない俺からの行動に、遊戯は戸惑ったように聞く。
けれど、俺はその声を無視して部屋に戻り、またベッドに潜り込んだ。
遊戯に背を向けて。
「ったく、怖い夢でもみたか?」
クク、と笑う声を聞きながら。
俺の隣に身を横たえた遊戯が俺の髪を撫でる感触に、
『…どうしたんだ?』
知らない。
ただ、貴様に触れたいと、急にそう思っただけだ。
20070812
〈満月は貴様に似ている。届きそうで届かなくて、其処にあるのに、ない。〉