空知らぬ雨
雨の中、校舎の外に一つの影。近づいて、見上げる。そっと濡れそぼって顔にかかる髪を掻き上げて。
「……ディル」
返事は、小さな小さな微笑。哀しいほど微かで、ただ反射のような。頬に手を当てる。冷えた肌。あぁ早く校内に連れて帰らねばならないだろうに。
(……気づいてしまった)
手を当てた後、目を瞬かせたディル。その瞬間冷えた肌に、冷たい雨に擬態しきれない温かいものを感じて。
(気づかねば、それはただの雨だったのだろうに)
だから何も云えないまま、動けないまま、二人雨の中に佇んだ。…とりあえず。
(あの金髪バカをぶん殴る。)
雨が、止んだら。