片恋sideS
[ …俺らしくもない ](疲れた)
(しんどい)
(このクソ親父が)
出来る限りの悪態を頭の中に浮かべ、枕に頬を摺り寄せる。
このまま起きてたって良い事なんてきっとない。
寝てしまった事にしよう、と目を瞑って小さく息を立てる。
そうすれば案外簡単に親父は信じてくれたようで、まったくつれないね、と寝ている筈の俺に気を使ってか小さく零した。
そして、触られた。
髪を。
だけど、思わず反応しそうで、恐い。
早く離せよ、とじっと耐えていたら。
「…片想い、だものね」
そんな声が、聞こえて。
それが、酷く酷く、寂しそうだったから。
胸が締め付けられる。
そんな義理は、全く、ないのに。
(片想い?)
何、で?
何で、そう、思ってんの?
(だって、俺は、)
…何だろう。
その言葉は哀しい。
凄く、―――嫌だ。
「おやおや」
何だよ親父。
触んなよ。
そんなに優しく、触んなよ。
俺を抱く時だって鬼畜全開の癖に。
こんな、時に。
優しくすんなよ。
「叶うと、良いな」
なぁ、何を願ったんだ?
何が叶うと良いと思った?
俺が叶えてやるよ、その願い。
(その代わり、俺の願いも叶えろよ)
ずっとずっと、俺の傍に居ろよ。
20091218
〈星にも言えないその願いを、ねぇ、貴方にだけは叶えてほしいの。〉