#ED1A3D
[ 赤い警報機が鳴る ]夢の後。
零れる涙が誰の為なのかという事を。
気にせず僕は払い落とした。
パラパラとアルバムを捲る。
多種多様な写真が其処にあり、様々な、けれどある程度同じ人達が写っていた。
楽しそうな顔で。
嬉しそうな顔で。
寂しそうな顔で。
泣いている顔で。
色々表情はあったけれど、どれも幸せそうだと漠然と思った。
小さく息を吐き、ぱたりと閉じる。
元あった場所にそれを戻して、ただ立ち竦んだ。
(…信じられない)
そんな言葉が心の中に零れて波紋を作る。
(信じたくない、のかもしれないが)
精一杯踏ん張っていないと床に膝を着いてしまいそうだったから、それならばと唇を噛み締めた。
痛みと感触で、唇を切った事を知った。
(それでも、足りない)
ふと視界の端に光る物を見つけた。
目を凝らせば、それが朝陽に当たって輝いているガラスコップだと気が付いて。
「――――」
手を伸ばす。
しっかりと握る。
大きく振りかぶって、床に叩き付ける。
そこそこの音と、破片が飛び散る。
中でも大き目の破片を手にとって、左腕に突き刺した。
(……痛い)
じくじくとした鈍痛と激痛とが交互に腕に広がる。
それによって、あぁではこれは現実なのだと思い知る。
夢でも幻想でも何でもない。
自分が生き、そして歩む世界にちゃんと居るのだと。
(それ、なのに)
足音が聞こえる。
ドアが大きく開かれて、一人の人が急ぎ足で入ってくる。
あぁ見た顔だ。
さっきのアルバムに写っていただろうか。
「 」
顔を歪めて、俺を見て、床を見て、俺を見た。
何かを叫ぶように言っている。
何を言ってる?
知りたくて、じっと口元を見る。
その視線に怖気付いたように、その人は唇を戦慄かせて。
「フリオニール…?」
………。
…あぁ、もしかして。
(それは、俺の名、なのだろうか)
1日目 8:55
20091223