未来予想図
[ ずっと此処にいたかった。 ]デッキを構成してはまた組み替える。
それは習慣のようなものだった。
毎夜、あらゆる敵を想定したデッキを作る。
それは海馬であったり、城之内君であったりする。
そっと、束ねたデッキに手を置いた。
ただの紙である筈のカードに少し温かさを感じて、ふ…っと薄く笑う。
相棒が寝たのを確認して、もう一度構成し直したこのデッキ。
想定した敵は――――相棒。
「……いつかは、相棒は俺の敵になる…いや、俺が、相棒の敵になるだろう」
その考えに、多分違いはない。
途端、笑みが引きつるのを感じた。
けれど無理に笑おうとして。
(無理、だった)
笑えない。
笑えない。
笑えない。
笑う事が、出来ない。
「いつか……俺はお前達を置いていく」
置いた手で、デッキを撫でる。
いつも傍にいた。
何度も助けられた相棒と共に、このデッキとも。
別れなくてはならないだろう。
「その時が来たら……相棒の力になってくれ」
俺を支えてくれたように。
今度は相棒の力になってくれ。
そう、思いつつ。
「―――そんな時が来ないのを、願う」
俺は、デッキから完全に手を離した。
20090703
〈願いは儚く崩れ去るものだと、知っていたのに。〉