太陽が翳る理由

[ 向き合わない矢印 ]



 視線の先には水晶玉。
 それは遠くの景色でも見る事のできる物で、その中には二人の人間の姿が見える。
 セトと―――バクラ。
 廃墟のような所で抱き合う二人。
 バクラは優しく微笑み、セトですらも何時ものような機嫌の悪さは窺う事ができない。
 思わず、溜息を吐く。

(―――知っていた事だ)

 二人が愛し合っている事は。
 けれど、俺もセトを愛している。
 叶わないのに。
 届かないのに。
 この想いを捨てる事は、どうしてもできなくて。
 つきりと痛む心を無視し出来ず、手を軽く振る事で水晶玉の景色を消した。
 そして(しとね)に体を投げる。
 やり切れなさに溜息が出る。
 それでもどうするつもりもなかった。
 あの二人の事を。
 無理に引き裂こうとは思わない。
 けれど。

「…見たく、ない」

 あの二人が互いを愛しそうに微笑んでいる姿など。





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 20070813
〈愛してるんだと闇に呟く。返る声はなく、太陽は褥を濡らして朝を待つ。〉





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