PRESENTforYOU
[ 放課後kiss ]それを聞いたのは、授業も終わった放課後の掃除の時間だったのだ。
「…え…誕生日?」
「そうそう。アイツ今日誕生日でさ」
今日はみんなの都合つかなくて、今度やるんだ。
何も知らず笑ってそう言った本田君には悪いけど。
―――何でもっと早く言ってくれないの…!
思わず心の中で言ってしまった。
「って、そう言えば…!」
アイツは今日掃除当番じゃないから、もう帰ってしまったんじゃあ…。
気づいた事に青ざめる。
「ごめんっ、掃除やっといて!」
「お、御伽!?」
教室から飛び出し、靴箱へと急ぐ。
帰る生徒が多いので靴箱は混雑していたが、目的の人物は目立つから見つけるのは容易かった。
「獏良君っ!」
「あれ、御伽君」
どうしたの?、と笑う獏良を、ちょっとこっち来て、と無理矢理人気のない所に連れ出した。
「ごめん、ちょっとアイツに代わってくれる?」
「あ、良いよ」
事情を察したのかあっさりと頷いてくれた獏良は眼を閉じて、次に目を開けた時にはバクラに代わっていた。
「どうしたよ、こんな所に呼び出して――…」
怪訝そうな顔をするバクラに。
軽く触れるだけのキス。
「……本当にどうしたんだ? 誘ってんのか?」
「違うよっ! 今日は獏良君の誕生日だってついさっき聞いたから…」
誕生日プレゼントなんて持ってない俺にあげられる物と言ったら。
「アレくらいしか思いつかなかったし、今日は仕事で会えないし…」
「…って、別に宿主様の誕生日だからって俺様の誕生日って訳じゃねぇんだけど」
「…あ!?」
それもそうか…と気付いた時にはバクラは目に涙を浮かべて爆笑していた。
「あーっもう! 忘れろ!」
かぁっと恥ずかしさに赤面しながら叫び踵を返して歩き出そうとした俺を。
「無理」
そんな言葉と共に背後から抱きしめたバクラが耳元で囁いた。
「ありがとな」
顔は見えないけど、その声はとても優しくて。
「……おめでとうって、ちゃんと獏良君にも言っといてね」
「おぅ」
恥ずかしかったし本当は誕生日じゃないかもしれないけれど。
滅多にこんな事をしない俺からのキスにバクラが喜んでるのが分かって、自分も少し嬉しくなる。
たまにはこういうのも良いのかも、と笑った。
20070902
〈(おーお、熱いこって)(って城之内くん。覗き見はどーなの?)(そういう遊戯だってしてるじゃない)(だって面白そうだったんだもん)〉