待機中

[ 魔法の言葉 ]



「瀬人様は今日もお戻りにならないと連絡を受けておりますが…」

 相棒が行こうというので海馬の家を訪ねれば、メイドさんが申し訳なさそうにそう言った。

「そうですか…」

 と言ってから、ん?、と相棒が首を傾げる。
 どうしたんだと問うたが、それに答える前に相棒はメイドさんに笑いかけて。

「けど、海馬君戻ってくるから待ってますね」
「え、あ、あの…!」

 相棒の言葉にメイドさんは慌てるが、相棒は気にせず海馬の部屋へと足を進めた。

『相棒、どういう事だ?』

 どんどん歩き、海馬の部屋へと辿り付いた相棒に不思議に思って聞く。
 相棒の言葉はメイドさんの言葉と一致しない。
 それを、相棒は事も無げに言った。

「海馬君、最近家に帰ってないみたいなんだよね」
『あぁ、そうらしいな』

 メイドさんは「今日も」と言っていたからそれは分かるが…と不思議な顔をすると。

「それって、あんまり良くないよね」

 何を指してあんまり良くないのか。
 言葉が向かう要素は多々あって判別しづらいが、俺は、そうだな、とだけ相槌を打った。

「だから、海馬君の為にもここに帰って来てくれなきゃね」

 そう言って相棒は最近買った携帯電話を取り出した。
 そして拙い動作で海馬に向けて文字を打つ。

「よし、できた」

 少し多くの時間を使って打った文字は、俺の予想していた言葉ではなかったけれど。

『…あぁ、なるほど』

 その言葉がどんな言葉よりも海馬にとって効果覿面である事は予想できた。

「送信、っと」

 帰って来るかな?、と笑って聞く相棒に。

『帰って来るさ、絶対に』

 力強く頷くと、今度は照れたように笑った。





『君の家で待ってる』

 そんな言葉だけでも、海馬は帰って来るさ。
 相棒の、言葉だからな。





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 20071118
〈そわそわと待つ相棒が子どものよう。笑えば笑わないでよとぷくりと頬を膨らませたからいよいよ可笑しくてしょうがない。あぁ早く帰ってこいよ海馬。この感動を分かち合えるのはお前しかいない。 〉





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