仮住まいの独り言

[ 同じカラダに異なるココロ ]



「―――何だ、貴様の方か」

 気付いた海馬は、途端眉を顰めた。
 その事に、ふっと笑う。

「何が可笑しい? …まぁ良い。もう一人の遊戯を出せ」

 今すぐにだ、と不機嫌そうに言う海馬に、聞きたくなる気持ちを抑えて相棒と代われば。

「あれ、海馬君。今日は学校に来られたんだね!」

 俺に向けていたような表情はさっと消えて、無表情に見えるように作った顔になる。
 けれど、どうして気づかないと思うのだろう。
 会えて嬉しいという気持ちは、そんな作り物の表情に隠しきれていないのに。





 ―――なぁ、海馬。
 相棒に向ける表情と気持ちを、少しで良い、俺にも向けてくれないか?
 それ以上は、望まないから。

(それすらも望むことは許されないのか)

 向けられる好意の行き先は、同じカラダの異なるココロ。
 厄介な事だと、心のドアにもたれ掛かりながら、思った。





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 20070810
〈恋ではない。ただ寂しいのだと王は云う。 〉





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