好きで嫌いで嫌いで好き。

[ 振り子の恋愛 ]



 何度も何度も繰り返す。

「キライ」

 その言葉を、馬鹿みたいに繰り返す。

「キライ」

 その言葉しか、知らない子供みたいに。

「キライ」

 スキと俺に言い続けるお前に。

「キライ」

 何度も何度も笑って言うんだ。

「キライ」

 なのに。

「うん、知ってる」

 お前もまた、笑って言う。

「知ってる、そんな事」

 綺麗に綺麗に笑って。

「お前がスキ」

 子供みたいに何かに縋るように俺の首に手を回して。

「スキ」

 その言葉にさえ笑いを滲ませて。

「スキ」

 そんなお前を俺は抱き寄せて。

「キライ」

 笑いながら言った。

「お前なんか、キライ」

 きゅっと軽く抱きしめた俺に。

「知ってる。だから―――スキ」

 お前は無邪気にそう言い放つ。

「スキだ…城之内」

 その笑顔を前に。

「―――俺はキライだよ、海馬」

 愛を囁くように。

「ダイキライ」

 ただ俺はそう言い続ける。





 なんてアンバランスな恋模様。
 「キライ」と言い続けなきゃ成り立たないなんて。
 可笑しすぎて腹が痛い。
 ついでにどっかも痛いかも。
 けれど俺は言い続けるんだ。

「―――お前なんか、キライ」

 睦言を囁くように。





(だってそうしなきゃこの恋を守れないから)





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 20090703
〈狂った関係。それでもお前と繋がっていたかった。〉





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