名前に未来を見た気がした

[ 〈未来〉は〈未来〉であり、〈訪れるもの〉ではなかったのに ]



 輪廻を繰り返す度、コロコロと変わる名前。
 国も違えば言葉も違うのだから当たり前だが。

(あぁ、けれど)

『―――瀬人(セト)

 自我が芽生えこの度の自身の名を知った時。
 何の冗談かと笑いたくなった。
 違う地に生まれた筈なのに。
 違う人間を親にもった筈なのに。
 同じ名を、この身に与えられるとは。

(恐らくその時から、気付いていた)

 唇を咬む。
 その小さな痛みに似た、答え。

(―――輪廻の、終わりに)

 意味のない事など何もない。
 この世の全ては因果の集大成。
 アイツが願い、オレが叶えた、この夢物語も。
 その、一つ。
 あぁだから。

(…覚悟は、していた)

 だからだから、―――だから。





 出てきた彼らの中に〈彼〉が居ない事など。
 嘆く事では、ないのだ。





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 20090913
〈知っていたことじゃないか。アイツは失い続け、オレはなくし続けることなんて。〉





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