古の約束を思い出す
[ 指切り ]夜も更け、疲れとともに眠気が躰を心地よく包みだした頃。
隣で寝そべる遊戯が声を出した。
「なぁ、海馬」
「……なんだ」
疲れた声で応えてやれば。
「指切り、って知ってるか?」
予想外の言葉が返ってきた。
「指切り?」
聞き間違いかと思い、思わず聞き返す。
しかし、オレの耳に間違いはないようで、遊戯は言葉もなく首肯した。
「知っているが……それがどうした?」
オレの戸惑いを含んだ声に、遊戯がまた口を開く。
「相棒がこの前、モクバとしてたんだ。互いの右手に小指を絡ませて。それは何だと聞くと、相棒は『指切りだよ』と言った。『何かを約束する時、指切りをして絶対にその約束を守るって、誓いを立てるんだ』って。守らないとゲンコツ一万回に、針を千本飲まなければならないらしい」
「……そうらしいな」
よく分からないままそう相槌を打った。
そうすれば遊戯は黙ってしまって、しばらくした後。
「……指切りって良いな」
突然そう呟いて、オレの指に自分の指を絡めてくる遊戯。
「…何故だ?」
「……二人でしか出来ない約束だから」
まるで縋るように。
小指を握る。
「一方的な約束じゃない…二人が同意して初めて結ばれる、約束」
願うように。
祈りを唱えるように。
「二人いて…初めて……」
そして、オレの指に口づける。
そっと。
笑いながら。
紅き瞳で。
遠くを見詰めながら。
(まるでそれは、縋るように。)
20090703
〈その約束は果たされたのか。〉