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[ 微睡みの中でみる夢 ]『…では、明日家に来い。午後一時だ。持ち物はいらない。身一つで来るがいい』
それが海馬からの、「会いたい」と言った俺への返答だった。
勿論この日に会いたいといえば理由は自ずと分かるだろうし、ゲームを主として扱っている会社を持つ海馬なら意識して当然の日。
けれどだからこそ、会えるとは思っていなかった。
仕事だ、と、その一言で断られると思っていたのに、意外にも海馬は拒絶しなかった。
その事に驚きつつ喜んでいたのだが。
「…身一つって、こういう事か」
呆れたような視線の先には、俺の膝で眠る海馬。
そっと髪を撫でれば、逃げるようにするすると流れる。
「一応プレゼント、用意してたんだぜ?」
愚痴のように言うが、どうしても口端が持ち上がるのは止められない。
―――嬉しいのだ。
海馬がただ俺だけを望んでくれた事が。
無防備に眠るほどに、関わりを許してくれている事が。
『物等で己の気持ちを表そうとするな。己で表せ』
そう言ってさっさと俺の膝に頭を乗せて眠ってしまった海馬。
「…なぁ、海馬」
撫でる手は休めない。
「今、どんな夢を見ているんだ?」
海馬がより深い夢で
「なぁ―――」
そして。
「夢の中に、俺もいるか?」
浮かべる笑みの要因の一つになれたらと。
重ねて、願った。
20071224
〈いつも通りでいい。ただ会いたいと思ったのなら会いに来い。特別な日だからって特別な事なんてするな。そんな事、願ってはいないから。 〉