いつかその日が来たとして

[ I don't know how to say goodbye. ]



 今日は皆で遊ぼうという事で、掃除に行った城之内君達を待っている間に相棒は獏良と喋っていた。
 けれど、どうも昨日寝るのが遅かった為か眠たげに急に相棒に代わって欲しいと言われ代われば。

「…バクラ?」
「…んぁ、王サマも代わったのかよ」

 どうやら獏良の方も何かの事情で入れ替わったらしい。
 暫くは他愛のない事を喋っていたのだが。
 会話が途切れた、その時に。

「…王サマ。アンタに、一応言っとくけどよぉ…」

 急にバクラが言い辛そうに言葉を吐き出す。
 何だ、と視線だけで問い返せば。

「ちゃんと、伝えとけよ…?」

 ぽつりと言ったのは、ただそれだけ。
 けれどその言葉の意味は、バクラの表情で何となく分かる気が、した。

「……あぁ」

 頷いた俺の顔も、俺の返事を聞いたバクラの顔も、どこか憂いを隠し切れないで。

「多分、アンタのも気付いてるとは思うけど…それでも、王サマの口から言ってやんな」

 ―――そう、だな。
 頷きつつ、バクラに聞きたい事はいっぱいあった。
 が、俺は何一つ聞きはせず、ただ心の中だけで言う。

(分かってるよ、いつか言わなくてはならない日が来る事は)

 お前が誰かにその言葉を言うように、俺にも言わなくてはならない人がいる。

(あぁ、けれど)

 どうやって『さよなら』を言えば良いのか、俺には分からないんだ。





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 20070824
〈言わなくても良い未来があれば良いのに。(そう願っても無駄なことを、ぼんやりと思った)〉





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